五十代の女性です。私の父親は日本犬が好きで、子供の頃から犬はほぼ途切れず飼っていました。そんな父が病に侵され苦しんでいた時、長年飼っていた老犬も父と同じような症状になってしまいました。父はその時は幸いにも快方に向かったのですが、入院先から外泊を認められ帰る予定だった前日に、犬の方が天に召されてしまったのです。次の日に帰宅した父は息絶えた犬に寄り添い、肩を落としていました。まるで、父の身代わりのように天国へ旅立ってしまった老犬・・父親の落胆ぶりは凄まじく、子供達で相談し、父親が退院した時に、仔犬を新しい家族に迎える事にしました。そして、良心的なブリーダーさんから一匹の豆柴犬が我が家にやってきました。名前は当時デビューしたての人気アイドルグループ「嵐」からいただき、アラシと名付け、庭で一緒に遊ぶ事が父にとってのリハビリになっていたのですが、その父もアラシが一才になる前に他界しました。以後、アラシの飼い主は私になり、そして人間ひとりと犬一匹の生活がはじまりました。父は犬を玄関までしか入れませんでしたが、私はアラシを室内で飼う事にして座敷犬にしてしまい、夜も一緒に寝ました。当時私はまだ30代で、親戚にアラシを預けて長期海外旅行に行ったことで、アラシは「分離不安症」になり他人にはなつかない犬になってしまいました。それからは出来るだけ寄り添って暮らし、どこに行くにもほぼ一緒という生活でした。あまりこだわってはいなかったのですが、アラシは血統書つきの犬でしたので、機会があればお見合いをして仔犬を生ませたいと考えていたので去勢をしなかったのですが、残念ながらその機会は訪れませんでした。年月が経ち、アラシが10才になったころ、健康診断で睾丸に腫瘍ができている事がわかり手術したのですが、手遅れだったようで間もなく再発し、11才になってすぐの頃に再手術をしましたが、心臓が持たず、そのまま息を引き取りました。私も手術中に亡くなるとは露にも思わず、突然の別れにしばらくは呆然としましたが「家に帰ろう!」と毅然として、自分で運転してアラシの亡骸を家に連れて帰りました。私が去勢させていればと本当に後悔しました。この年は東日本大震災が起こった年で、東北ではない私の地元の動物保護施設にもたくさんの被災犬が避難していて、被災犬ではなくとも一匹でも譲渡してもらえれば、間接的に役に立てるのではと考え、施設にいた柴犬を迎えました。あえて問題有りの犬を選び、この仔の面倒を見る事でアラシを長生きさせてあげられなかったせめてもの罪滅ぼしになればと今でも思ってます。
52歳女性 新しい家族を迎えて罪滅ぼしする毎日
