私がまだ子供の頃、私の祖父がもらってきた雑種犬がいました。メスなのに、性別を見間違えてオスの名前を付けられていました。とても優しくて元気な犬でしたが、ある時、祖父がその犬の後ろ足をフォークリフトで轢いてしまいました。わざとではありません。祖父は犬を動物病院に連れていきましたが、もう後ろ足は治る見込みがないといわれてしまいました。犬が家に帰ってきてから、みるみるうちに元気がなくなり、ほとんど寝てばかりいました。でも、私や弟が近寄ると小屋から出てきてくれます。幼い私は毎日その犬の足をマッサージしてあげました。すると、一瞬ですが、痛みを忘れたかのように立ち上がるのです。それを見た私は嬉しくなって、いつかよくなると信じ、足をさすり続けました。ある日、帰るとその犬がいなくなっていました。どうしたのか私の父親に聞くと、病院に入院して手術する、しばらくいないとのことでした。私はその言葉を信じて待っていました。でも、事実はそれとは異なりました。足が悪くなり、動けなくなった犬が憐れだ、見ていられない、ということで、それならいっそのこと天国へ送ったほうがいいと祖父は考えました。祖父は家族の意見は聞かず、独断で保健所に連れていってしまったのです。私は何度も犬のことを聞きましたが、父は歯切れ悪そうにもう少しで帰って来るというばかりでした。ある日、とうとう父が事実を打ち明けると私は悲しみのあまり怒り狂いました。自分勝手な理由で、可愛がっていた犬を天国へ送った祖父を憎みました。私の家では、朝ご飯を食べる前に必ず仏壇に手を合わせる習慣があったのですが、私はそのたびに亡くなった家族のことと一緒に、その犬のために祈りました。何度も「助けられなくて、ごめんね」と謝りました。でも、私の心は傷ついたままでした。今でも保健所に送られる数々の犬や猫たちの話を聞くと心が痛みます。いつか、私が犬や猫をその場から救うことができたなら、出来る限りのことをして幸せな生活を送らせてあげたいです。私が以前の犬にできなかったことをしてあげることで、幼少期のいやな思い出を昇華し、せめてものその犬の供養となるように願っています。
足を怪我して寝てばかりいるようになった愛犬を不憫だからという理由で家族の意見を聞かずに保健所に連れて行った祖父を憎んだ
