こんにちは。5年前にフェレットを亡くした飼い主です。フェレットは雌のパスバレー、模様はセーブルで名前はルナでした。フェレットを飼ったことのある方ならご存知だと思いますが、フェレットは噛み癖の強い生き物です。ペットショップで色々な子をお試し抱っこしている時に遊び気分で噛まれる事はよくありましたが、ルナははじめっから甘噛みや舐めたりするだけ、あとはくったり身を寄せて甘えてきました。オモチャ相手には悪魔のような形相で全力カミカミしていたので、噛むことがキライというわけではなかったようですが、人間は噛まないと決めていたかのように誰かを噛むことはしない子でした。音楽を流せば頭を振って踊り(特にインド音楽がお好みだったようです)、カバンに潜り込んではお財布を抜き取って走り出したり、私の手を咥えてタンスの下のMY宝物箱に運んでいこうとするような、陽気で可愛い子でした。発症したのは7歳の時。突然口元を掻きむしって苦しみ始めたので最初は誤飲を疑いました。すぐに夜間動物病院に運び、その時はめぼしい原因も見当たらずに治まりました。しかし、その後も度々発作を起こすようになり、かかりつけの動物病院でインスリノーマ(膵臓の腫瘍)と診断されました。誤飲で苦しんでいるように見えたのは低血糖の発作だったのです。発作が起きるとブドウ糖を与え、治まらなければ病院に走りました。最初は処置さえしていればしばらくは大丈夫だったものが、次第に間隔は狭まり、最後の方では週に2度、3度と増えていきました。最期の日は発症から半年後のことでし。その日の発作は大きく、病院から帰った後もぐったりと横たわったままで時折「くぅ」と鳴いていました。フェレットは余程のことがなければ鳴きませんので、苦しかったのだと思います。もう少し、ブドウ糖を与えた方がいいのかもしれないと抱き起した瞬間に、目から光がすうっと消えていきました。命はこうやって抜けていくのかと頭のどこかで妙に冷静に思ったのを覚えています。看取った直後、もうすぐさま猛然とケージやルナのものを片付け始めました。「悲しみで動けなくなる前に」「明日空っぽのケージをみたらもっと悲しくなってしまう」と思っての事でしたが、翌日、埋葬を済ませた後で帰宅した部屋に、ルナの痕跡が何も残っていないのは余計に寂しい事でした。お別れが近い事はわかっていたので、やれることはなんでもやったつもりです。そこに後悔はないのですが、遺品の片づけはもっと落ち着いて、ゆっくりすればよかったと思いました。毎日毎日、いつもルナが走り回っていた床の低い位置や、丸まって宝物で遊んでいた部屋の隅に、視線がつい向かってしまいます。でももう、そこには何もないし、当然ルナもいない。いないことを再確認しては泣く、の繰り返しでした。視線のやり場に困り果て、ふと見つけたイタチのぬいぐるみにルナの服を着せてみました。生前にふと買ってみたものの、着せてみたら窮屈そうで、結局1回しか着なかった服です。その服を着たぬいぐるみを、いつもルナが居た場所を転々と移動させ、寂しくなったらそこを見るようにしました。お散歩に連れていくと尻尾をバフンバフンに膨らませて興奮していた事を思い出し、お散歩用のリードもつけて、出かける時にはカバンに入れてこっそり連れ歩いたりもしました。闘病中、夜中に何度も目を覚まして様子を確かめた癖が抜けず、ルナの夢を見ては何度も起きて、ぬいぐるみのルナを見つけました。夢に出てくるルナはいつも発作を起こして苦しんでいました。ルナが無くなった直後は、元気だったころ、楽しく暮らしていた頃のことは思い出せず、写真を見返すこともできませんでした。思い切って撮りためた動画を繋いで一本にまとめ、見返すことができたのは半年以上たってから、ルナの夢をあまり見なくなった頃です。「最後は苦しい思いをさせてしまったけれど、こんなに楽しい時もあった」「一緒に暮らしていて幸せだった時間の方が圧倒的に多かった」時間が経ってから見返したことで、しみじみとそう思うことができました。ペットロスを感じずに済む方法はありませんし、何をやっても振り切ることはできないと思います。無理に克服しようとは思わず、日にち薬に任せて自然に癒されるのを待つより他に無いのではないでしょうか。今は新しいペットと暮らしています。それでも「新しい子がいるからもう悲しくない」ということはなく、時折思い出しては寂しくなったり懐かしく思ったりします。その後引っ越しもしましたが、ぬいぐるみのルナはまだ部屋にいます。今でもペットロスが抜けきらないほどに、私はルナが可愛くて大切だったんだなあ、と思うようにしています。
38歳女 ぬいぐるみをそばにおいて、時間が経ってから動画を見返す
