わたしが高校生の時、自宅に帰ると、母からクリが死んだよ。と言われました。昨日まで元気で病気でもなかったのに何を言っているんだ?という感じで、庭に出てみると、クリがいない・・。何かの上にシーツがかけられていました。わたしは、シーツの下にはクリがいる・・と思いましたが、怖くてめくれません。そもそもどうして死んだのかも聞いていません。少しだけ隙間から覗くと、クリの口が見えました。一目でもうこの世にいない事がわかるほど、ピクリともしないし息もしていない。結局わたしはそれ以上見れませんでした。母にどうして死んだの?と聞いても教えてくれません。家族はみんな黙ったままで誰も何も言いません。異様な雰囲気のまま、その日を過ごしました。悲しさよりも、わけがわからず、まだ死んだ事を受け入れらてもいなかったので、考えないようにして寝ました。数日後、母から実はね、弟がクリをお風呂に入れてあげるんだーって一人でお風呂に入れたみたいなの。そしたらクリが動かなくなっちゃったんだって・・と。お風呂に入れた事でどうして死んでしまったのかは今だに分かりません。大型犬なので溺れるとも思えません。そもそもクリは頭の良い犬です。力もあるので、何かあれば自分で脱走するでしょう。そう、クリは常習脱走犯です。でも、脱走しても必ずわたしが見失わない距離感を保ったまま逃げます。何度もクリは止まって振り向いてわたしが近づくと逃げるという感じで、完全にわたしをオモチャにしていました。弟は当時小学生になったばかり。弟がクリを死なせるなど考えられません。可愛がってあげてるつもりが死なせてしまったので、家族も表立って悲しむ事ができず、皆沈黙していたのでした。弟もお風呂に入れただけなのにどうして・・という風に動揺していました。私も弟の手前、あまり悲しむ様子を見せないように、クリは天国に行ったんだね、最後にお風呂に入れて気持ちよかっただろうね。と弟に言いましたが、今でもちゃんと笑えていたか分かりません。今でも最後に顔を見てあげなかったこと、なでてあげなかったことを後悔しています。そして今だに話題に出しにくい事がとても悲しいです。でもみんな今でも愛しています。別れは悲しいけど、クリを思い出すときはいつだって笑顔になるわたしと家族です。
謎の突然死をしてしまった常習脱走犯だった愛犬 思い出すときはいつも笑顔になる
