寒い寒い曇り空の冬の日でした。小学校からの帰り道、畑の真ん中でプルプルと震えている子犬がいました。つぶらな黒い瞳と人懐っこい口元、頼りなく震えるその小さな生き物をこのままにしておけないと思い、両手に抱えて家に連れて帰りました。家は一軒家でしたが、ペットを飼うことに良い顔をしなかった両親に、「自分でちゃんと世話をするから」と頼み込んで、なんとかその小さな生き物を家に迎え入れることができました。出したごはんをなんでもモリモリ食べて、お皿まできれいに舐めるので、「ペロ」と名付けてかわいがりました。ペロが亡くなったのは、出会いから15年目のことでした。ペロは外飼いにしていたのですが、年季が入ってゆるくなった首輪を引きちぎって、逃げ出したのです。今までこんなことはありませんでした。ペロがいないことに気づいて、必死になって探しました。ペロがいなくなって3日後、家から100メートル離れた用水の側で、冷たくなっている姿を見つけました。泣きました。そして自分を責めました。どうして首輪をもっとちゃんと確認しておかなかったのだろうか。家が汚れるからと外飼いにせず、家の中に入れていてあげれば、こんなことにはならなかったのじゃないか。ペロはもっと、自由になりたかったのだろうか。うちでの暮らしは、楽しかったのだろうか。ペロが亡くなっているのを見つけたのも、寒い寒い曇り空の冬の日でした。私は底冷えする冬の曇り空の日には、ペロと出会った日の事・ペロが冷たくなっているのを見つけた日のことを、どうしても思い出してしまいます。あれから8年経ったのですが、今もまだ大切なものを失うことが怖くて、ペットを飼うことが出来ません。
出会いから15年首輪を引きちぎって逃げ出した愛犬 3日後用水路で変わり果てた姿に。 首輪を新しくしなかったことに後悔
