私は中学2年生から柴犬を飼っていました。母がペットショップで一目ぼれしたのが飼い始めたきっかけでしたが、すぐに家族の一員としてなくてはならない存在になりました。柴犬の特徴か、家族以外の人にはなつかず、来客に吠えるので少し困る面もありましたが、一方で自分たちだけになついていることで一層可愛くも思えました。散歩が大好きで、リードを持った私が現れると、すぐに門の前まで走って行ってスタンバイ。そして、いつまでも帰りたがりませんでした。しかし、歳を取るにつれて徐々に耳が遠くなり、目も白内障になり、そして痴ほうもはじまってしまいました。ずっと休みなくぐるぐる歩き続け、狭いところに挟まって動けなくなっているのを見つけては助けてあげていました。ずっと庭で放し飼いをしていたのですが、徐々に寒さや暑さにも弱くなり、日中は外、夜は玄関で過ごし、そして段々と玄関にいる時間が増えていきました。それでも、フラフラする足腰で踏ん張りながらご飯は頑張って食べていました。衰えながらも一生懸命生きる姿は本当に愛おしかったです。しかし、遂にご飯も食べなくなり、息が細くなってきて、これはいよいよかと感じた夜、私は愛犬を胸に抱きながら一晩を過ごしました。すると、突然、あれだけ虫の息だった彼女がキャンキャンと何かを訴えるように鳴いたのです。抱かれているのが嫌だったかなと思い、床におろすと、彼女は体の中の汚いものを出し、そして息を引き取りました。最後に吠えた時に訴えたかったのは定かではありませんが、生前本当にお利口だった彼女のことなので、きっと私の服を汚すのが嫌で気を使ったのではないかという気がしています。それからというもの、私の心にはぽっかりと穴が開いてしまったような寂しさがありどうしようもありませんでした。だからと言って、ペットを失う辛さを味わった直後で新しい生き物を飼う気にもなれず、庭を見ては彼女が走り回っていた姿を思い出すような毎日でした。私がこのペットロスか脱することができたのには二つの理由があります。まずは、小さなサボテンを買ったこと。枯れにくい植物を選び、名前を付けて寂しくなったらサボテンに話しかけていました。もう一つは、庭に時々野良猫の親子が遊びに来るようになったことです。それまであまり猫は好きではなかったのですが、子猫が兄弟で戯れる様子などは本当に癒されました。野良猫なのでいつ現れるかはわからないのですが、それがまた見つけた時のウキウキ感を増幅させました。決して餌は与えていないのですが、安全な家だと分かったからか、今では軒下で無防備にくつろいだりするようになっており、気ままな来客とのおつきあいを続けています。
34歳 女 意外な来客で癒され
