海外に住んでいたとき、ゴンタという犬を飼っていました。犬を飼いたくて、現地の動物保護団体で子犬のときに譲ってもらったのです。柴犬くらいの雑種です。保護団体に見に行ったとき、市場で出産していたという野良犬の母親と、おっばいにむしゃぶりついている8匹の子犬がいました。その中で一番おとなしそうな泣き顔の子犬を選び、もらえる大きさになるまで待って、やっと我が家に迎え入れました。家に向かう車の中で、私の腕の中で不安そうにウフン、ウフンと鳴いていた姿が昨日のことのように思い出されます。その日から、夫と娘とゴンタとの生活が始まりました。ゴンタはかしこい犬で、現地では放し飼いが普通なのですが、娘がちょっと近所の友達の家に行くときなど「ゴンタ、ついて行ってあげて」と言うと、娘の前に立って一緒に行くのです。娘を無事に送り届けたらひとりで戻ってきて、門の前でじっと娘の帰りを待っていました。夕方、家事の合い間に庭先で一休みしているとやってきて隣に座り、私のひざのあたりをはむはむと軽く噛んで労ってくれたり。海外では、孤独になりがちです。私はゴンタに日本語で話しかけ、ときにぎゅっと抱きしめたり、一緒に寝転んでその体温を感じることで本当に救われていました。しかし4年ほど経ったとき、突然の別れがやってきました。夫にゴンタと留守を任せて、娘と二人で1か月ほど一時帰国したときのことです。その数日前からゴンタが少しずつ痩せてきて心配だったので、翌日に獣医に行くことを夫に頼んで出発しました。家を出るとき、ゴンタのおでこと自分のおでこをくっつけて、「帰ってくるまでに元気になってるんだよ」と言ったのが、最後でした。私たちが帰国して3日後、夫がひとりでゴンタを看取ることとなりました。獣医さんの話では、へビに噛まれたのではないかということで、どうしようもなく、その夜はゴンタがドアの隙間からクウ~ンと夫を呼び、夫が傍に行くと横たわって、そのままゆっくり息をひきとったのだそうです。1ヵ月後、私たちが戻ってきたときにはゴンタはもう埋葬されていました。最後を看取ってやれずかわいそうなことをしたという思いがずっとあり、急にいなくなったようで実感もなかなかわかず、道で似た犬をみかけては「ゴンタ!」と声をかけてしまう日々が続きました。そんなある夜、夢にゴンタが出てきたのです。私は犬たちがたくさん走り回って遊んでいる広い広い丘の様なところにいて、そこでゴンタを探していました。丘の真ん中に小さな小屋があり、その中に入ると、ゴンタが横たわっていて、頭の上のほうに白い光があり、そこへ吸い込まれようとしているところでした。「ゴンタは生まれ変わろうとしているんだ」と思った私は、ゴンタの体にぎゅっとしがみついて「ゴンタ!ゴンタ!」と叫んでいました。叫びながら目が覚めると、頬がぐっしょりぬれるほど寝ている間に泣いていたことに気付き、こんなことは初めてで自分でもびっくりしたのです。きっと、その日を境にゴンタは生まれ変わったのだと思います。最後に抱きしめてやれなかったから、夢の中で抱きしめさせてくれたんだと思います。生まれ変わったから、いつかまた私たちのところにやってくる。そんな縁がきっとまたある。そう思って、次に訪れる縁を待つ気持ちになれました。最後まで本当にいい子でした。
海外生活を支えてくれた愛犬 お別れができず後悔 夢にでてきれくれて生まれ変わりを実感
