20代半ばになり、独り暮らしになれてきた頃のこと。犬を飼いたいと、調べ初めてから間もなく運命の出会いが訪れました。仔犬は黒パグの男の子。名前をボンと名付けました。一人暮らしで、お留守番をさせていましたから、仕事が終わるとすぐさま帰り近所の公園にお散歩。週末にはドッグラン、おしゃれなペットグッズを買ったりしてボンのいる生活を満喫していました。それは、ボンが4歳のお誕生日を迎えて少し経った頃でしたボンは排便の度に下痢をするようになりました。薬を変え、病院を変え、それでも良くならないばかりか食欲までなくなりました。どうして、こんなに治らないんだろう…不安ばかりが膨らみました。藁にもすがる思いで受診した病院で、先生は熱心に話を聞き、診察してくれました。「もしかしたら、これはお腹の問題だけではないかもしれません」詳しく検査をした結果。病名は「悪性リンパ腫」でした。それからは実家に戻り、家族の協力をもらいながら、先生と一つ一つの治療を話し合い病気と戦っていきました。負担の無いようにといくつかの治療を提案してくださり、私も納得のいく形で進められました。父も母も、日中勤めている私の分までボンの面倒を見てくれました。夜中に眠れず起き出して、じっと何かに耐えるようにお座りしていたボン。彼も小さい体でよく頑張っていました。けれど、1か月後、ボンは星になりました。もうダメかな。そう思って2日も仕事をずる休みして付き添いましたが、これ以上は、と出勤したその日の夕方のことでした。離れていたけれど、心臓がバクバクして「あ、ボンは星になった」と分かりました。一緒にいる間は頑張ってくれたんだな、と思いました。母に小さな仏壇を作ってもらって、ボンは私を待っていました。先生もわざわざお花を持って来てくれました。最後までみんなに愛され、支えてもらって、短いけれど幸せな犬生でした。心残りはなかったけれど、失った哀しみは強く、それから週末にはボンの絵ばかりを描いて過ごしていました。何枚も何枚も、描きました。心が癒されるには長い時間がかかりましたが、本当に幸せな宝物のような日々だったとしみじみ思い出します。ボンが病気になる前に夢を見ました。広くて緑の美しい公園のような場所でした。ボンもいつもの跳ねるような歩き方でご機嫌にお散歩していました。何故か鳥居が立っていて不思議な気がしたので覚えていました。もう何年も経っているけれど、もしかしたら私達は今でも、あの夢の中で、時々お散歩したりしてるのかな、と思ったりします。それから、熱心に診察してくれた、当時は開業したばかりの先生も、今では皆が名医と信頼する動物病院の院長先生におなりです。
みんなに支えてもらいながら、悪性リンパ腫と戦い星になった4歳の黒パグ
