小学3,4年生の頃だったと思います。近所に住んでいた親戚のおじさんから、インコを1羽譲り受けました。親戚のおじさんは、ペットショップの仲介という珍しい仕事をしていたので、自宅では血統書付の猫や、小学校にあるような大きな檻にインコやオウムを数羽飼っていたりしていました。その1羽をもらったと記憶しています。そのインコは、「ピイ」という名前を付けました。玄関先の軒裏に金具を親が取りつけてくれて、そこに50センチ四方のかごをぶら下げていました。かごは朝方に自分で金物にかけて、夕方の暗くなる時間にその金物からおりを外し、屋内にとりいれていました。当時夕方には面白いアニメが30分おきに放映されているという、子供にとってはゴールデンタイムであって、アニメの合間や、CMの間に外に出てかごを取り入れるのが日常になっていました。秋から冬になる頃でした。いつも通り夕方になるとアニメを観るために、ソファに座り、お菓子を食べながらアニメに集中していました。母親から、「ぴいをそろそろ中に入れてあげて」と言われても、「まだ、早いよ」と返答し、日が短くなって、すぐ暗くなることは分かっていても、アニメの区切りがつくまでその場から離れたくありませんでした。没頭していたアニメが終了し、窓から外をみるともう真っ暗でした。いけないいけないと思いながら、玄関を出ると、ピイのいるかごの上に1匹の猫がかごの隙間に手を入れていました。「こら!」と言った声で猫は逃げていき、私はすぐにかごを下しました。まさかまさかと、かごをみると、ぴいは、かごの底部に横たわっていました。「お母さん!お母さん!」と声をかえ、その声に驚いたのか、母親もすぐにかけよってきました。母親がかごの扉からピイを取り出すと、まだかすかに動いていました。私は、混乱してしまって、母親に「すぐにお医者さんに連れていって!」と泣きながら叫んだことを今でも思い出します。しかし、ピイはそのうちに動かなくなりました。それからすぐに父親が仕事から帰ってきました。泣きわめいている私を見て母親から事情を聞いたと思います。ピイを布で巻いて、かごの中に戻した私は父親と一緒にお風呂で話をしました。その時はまだ泣き続けていて、話ながら涙が止まりませんでした。大切なピイが襲われたこと、母親から何度も声をかけられたのに、アニメに夢中でピイを中に入れることを後回しにしてしまったこと、もっとかわいがってやればよかった、もっと遊んでやればよかった、など頭の中が混乱していました。だんだん動かなくなるのを目の前で見たことは、衝撃的で今でも忘れることはありません。秋から冬にかけて、日が沈むのが早くなるころ、ついこの間のように、あの時を思い出し、とても切なくなります。今は、教訓として、何にでも責任を持って命を大切にしていかなければならないと思っています。私にも子供ができ、小学生になりました。今では嫌いだった猫を子供の要望で飼うことになり、猫が襲ったからとか思っていた自分を見つめ直し、全部自分の不注意だったんだなと、今の猫をかわいがっています。
アニメに夢中でなくしてしまったインコ 同じ季節がやってくると切ない気持ちに 大切な教訓に
