東京郊外出身の俳優です。「先生」との出会いは小学校2年生の時でした。兄の同級生の家で子猫が生まれたと聞き、二人で見に行ったのを覚えています。アメリカンショートヘアとチンチラの雑種で、トラ猫なのに毛足の長い猫と、短い猫が数匹。その中でも毛足が短く、一番やんちゃで活発だったのが「先生」でした。家に帰り、早速両親に飼いたいと駄々をこねましたが、すでに我が家に一匹猫を飼っていたこともあり母に反対されてしまいました。しかし、数日後その反対したはずの母がまた同級生の母友達に連れられ、一目惚れで連れて帰ってきてしまったのでした。「先生」の名前の由来は、御飯時にテーブルの上に乗ったおかずを終始諦めずにいる根性が座ったその姿勢を、僕ら兄弟に見習わせようということから「にゃんこ先生」の「先生」が残った形です。我が家に人の出入りが多かったせいか、先生は自分も人間かのように、お客様が来ても全く警戒心ない不思議な猫でした。ある年のこと、父が体調を崩し心臓病を患いました。闘病生活に入った父の面倒を見る母の心はどんどん疲れていきましたが、そんな時に彼女の心の癒しとなったのは先生の存在でした。しかしその時ですでに先生は15歳、すでに猫としては随分な年寄り猫になっていたのです。そして父が亡くなった直後、自分の仕事を終えたかのように先生は順番に体調を崩し、あとを追うように天国へ旅立ちました。そしてその瞬間、これは今でも本当に信じられない光景なんですが、家の前に二本の虹がかかったんです。家族で泣きながらその虹を見、その夜に先生の葬儀を行いました。ペットの火葬場で行われたお葬式は、なんだか少し無駄にムーディな音楽などが流れ過剰な演出がありつつも、しっかりお骨の説明などもしていただき、ちゃんと供養することができました。火葬している間待合室で待っていると「ペットが渡ってくる二本の虹のお話」という絵本がそこにありました。つい先刻その光景をリアルに見たあとだったので驚いたのですが、先にその虹の橋を渡り買われていたペットは飼い主の魂をそこで待っているという内容だったと思います。家族でその話を見て、先生はきっと虹の向こうで待っていてくれてるんだねと話してまた泣いたのでした。その1週間後、僕の娘は産まれて来ました。2本の虹は、飼い主を待つための虹ではなくて、新しい命をバトンタッチでこちらに送るための虹だったようです。
31歳男 愛猫をペット霊園で葬式してもらい、気持ちが落ちついた
