突然なくなった大好きだったカナリア 暖かでやわらかいなきがらは一生わすれることができない
子供のころ、ペットのカナリアが亡くなった体験談をお話しします。
レモンカナリアのピーちゃんは、羽の色がその名の通りレモン色で本当にきれいな鳥でした。
正確に言うと、ピーちゃんは兄のペットでした。
私のペットの小鳥は、茶色くてがさつで、あまりかわいいとは思えませんでした。
兄が私の誕生日プレゼントにと買ってきてくれた小鳥です。
見たこともない鳥で、種類を訪ねたら、兄は「ヘキ鳥」だと答えました。
文鳥、十姉妹、セキセイインコと我が家では歴代、数種類の小鳥を飼っていました。
それらと比べると、ヘキ鳥はあきらかに落ち着きがなく、人間が近づくと異常なまでに鳥カゴの中でバタバタと逃げ回ります。
ヘキ鳥のお世話は欠かさず行っていました。
エサや水を清潔なものに取り換え、フンをしたトレイの広告の紙を取り替え、トレイの水洗いも。
しかしながら、お世話をしていても、愛着がわかず、私は次第に兄のカナリアの方に心惹かれていきました。
カナリアのピーちゃんは私が付けた名前です。
兄は名前など付けません。
ピーちゃんはおとなしく、鳴き声も可愛らしかったです。
鳥カゴの端に寄ってきてくれ、懐いてくれるのです。
お顔や瞳も可愛らしく、じっと私を見つめてくれ、時には笑っているようにさえ見えました。
忙しい兄に代わって、ピーちゃんのお世話も私がしていました。
ピーちゃんはある日、突然亡くなりました。
理由はわかりません。
真夜中に息を引き取りました。
ピーちゃんを看取ったのは私だけです。
両親も兄たちも(兄は二人いるのですが、二人とも)ピーちゃんのことは、ほったらかしです。
私は手のひらの中で、横たわって動かないピーちゃんを何度もやさしくなでました。
今、こうして思い出すだけでも涙があふれて止まりません。
ピーちゃんの亡骸は自宅の庭の深い所に埋葬しました。
墓標も私が立てました。
我が家の裏山にはイタチがいて、十姉妹たちが被害を受けたことがあります。
隣家の猫がよくうちの庭に来ていたこともあり、決して掘り返されないように細心の注意を払いました。
突然亡くなったので、病気なのか何なのかわからなかったのですが、お水が汚れていたのかなとかエサにばい菌が入ったのかなとか、もっとこまめにお掃除をすればよかったのかなと子供心に後悔したのを覚えています。
もっともっとお世話をしてあげたかったです。
ピーちゃんが亡くなってからは、朝起きて学校に行くのもおっくうで、また下校してからも「ただいま、ピーちゃん」という楽しみもありません。
ショックを受け、寂しく思っているのは私だけで、両親も兄たちも全く悲しむ気配はありませんでした。
我が家は、お盆などは両親の里に帰省するので、家を留守にするため、犬や猫は飼うのはNGでした。
小鳥や魚はOKで、それも私ではなく、両親や兄が積極的に飼っていたにも関わらず、今にして思えば家族はあまり愛情をかけると言うか、かわいがっている風ではなかったなと思います。
ピーちゃんが亡くなってからは、小鳥を飼っていません。
ちなみにヘキ鳥はピーちゃんが亡くなる前に、お掃除の時に逃げて行ってしまって既にいませんでした。
手のひらの中の、ピーちゃんの軽くてやわらかくて暖かな亡骸は一生忘れることはできません。
ピーちゃんが天国では、鳥カゴの中ではなく、自由に羽ばたいている姿を想像すると少し気持ちが癒されるのです。