ペットロスで“比較”してしまう…新しい子に向ける視線の整え方
1. はじめに:比べてしまう自分を責めなくていい
ペットロスのあと、新しい子と暮らし始めたり、迎えることを考え始めたとき、「前の子はこうだったのに」「どうして同じように感じられないのだろう」と、無意識に比較してしまう人は少なくありません。
この比較に気づいた瞬間、「こんなことを思う自分はひどいのでは」「新しい子に失礼なのでは」と強い自己嫌悪に陥ることもあります。しかしまず知っておいてほしいのは、比較は愛情が薄い証拠ではないということです。深く関わった記憶があるからこそ、比較は自然に起こります。
2. なぜ比較は起こるのか
比較は、新しい子そのものを評価しているというより、過去の関係性の記憶がまだ強く働いている状態で起こります。
- 前の子との生活が長く、体に染みついている
- 喪失体験がまだ整理しきれていない
- 「同じように愛せるか」という不安がある
これらが重なると、無意識に「基準点」として前の子を思い出してしまいます。比較は、新しい子を拒絶している行為ではなく、過去の関係をまだ手放せていないサインと捉えるほうが、心への負担が少なくなります。
3. 視線の整え方①:比較を止めようとしない
「比べてはいけない」と思えば思うほど、比較は強まります。まずは、比較してしまう自分を止めようとしないことが大切です。
頭に浮かんだ比較の言葉に対して、「今はそう感じているんだな」と一歩引いて受け止めてみてください。良い・悪いの評価を加えず、事実として認識するだけで、感情の暴走は起こりにくくなります。
4. 視線の整え方②:「違い」を欠点に変換しない
比較がつらくなる理由の一つは、違いをそのまま受け取れず、「足りない」「前より劣る」という評価に変えてしまうことです。
新しい子の行動や性格は、前の子と違って当然です。違いは欠点ではなく、その子固有の特徴です。「前の子は甘えん坊だった」ではなく、「この子は距離の取り方が違う」と言葉を言い換えるだけでも、視線の質が変わります。
5. 視線の整え方③:前の子との関係と切り分ける
新しい子に向ける感情が薄く感じられると、「同じだけ愛せていないのでは」と不安になることがあります。しかし、関係性は時間をかけて育つものです。
前の子との絆は、長い年月の積み重ねによって形作られました。同じ深さを、同じスピードで感じられなくて当然です。比較しているのは感情の量ではなく、歴史の長さだと考えてみてください。
6. 視線の整え方④:新しい子に役割を背負わせない
無意識のうちに、「前の子の代わり」「この寂しさを埋める存在」という役割を期待してしまうと、比較は強くなります。
新しい子は、誰かの代役ではありません。一つの命として関係を築く余白が必要です。役割期待に気づいたら、「この子はこの子」と心の中で区切り直してみてください。
7. 視線の整え方⑤:比べたくなる瞬間を把握する
比較は、常に起こるわけではなく、特定の場面で強く出ることがあります。
- 同じ場所で同じ行動をしたとき
- 写真や思い出に触れた直後
- 疲れているとき、気持ちが落ちているとき
「比べてしまう瞬間」を知ることで、事前に距離を取ったり、深呼吸したりと、心の準備ができるようになります。
8. 注意点:比較が苦しさに変わっている場合
比較が続き、「この子を迎えたのは間違いだったのでは」「自分は向いていないのでは」という自己否定に発展している場合、無理に一人で抱え込まないことが大切です。
信頼できる人に話す、専門家に相談するなど、外に出すことで視点がほぐれることもあります。比較は心の疲労サインとして現れることもあるのです。
9. まとめ:視線は時間とともに自然に変わる
ペットロス後に新しい子を前の子と比べてしまうのは、異常でも冷酷でもありません。深い関係を築いた証として、ごく自然に起こる反応です。
大切なのは、比較を消すことではなく、比較に振り回されない視線を育てることです。違いを違いとして受け取り、関係の育ち方を急がないでください。
そのゆっくりとした歩みこそが、新しい子とあなたの間に、これから築かれていく大切な時間の土台になります。
