ペットロスで“区切り”を作りたい人のための記念日の設計

1. はじめに:「区切り」を求める気持ちは自然なもの

ペットを失ったあと、「このままずっと同じ気持ちでいるのだろうか」「どこかで区切りを作ったほうがいいのでは」と考える人は少なくありません。命日や月命日、一周忌のような節目を意識することで、心に整理をつけたいと感じるのはごく自然な反応です。

ただし、区切りは悲しみを終わらせるためのものではありません。無理に線を引こうとすると、かえって苦しさが増すこともあります。本記事では、心を追い込まないための記念日の設計方法を整理します。

2. 「区切り=忘れること」ではない

まず大切なのは、「区切りを作る=忘れること」ではないと理解することです。記念日は、関係を断つためではなく、関係性の形を少し変えるための目印として考えるほうが、心に負担がかかりにくくなります。

思い出す頻度や向き合い方が変わっていくことは、裏切りではなく回復の一部です。その変化を認めるために、記念日を使うという視点を持ってください。

3. 設計手順①:なぜ区切りを作りたいのか言葉にする

記念日を設計する前に、「なぜ区切りがほしいのか」を一度整理してみましょう。

  • 悲しみがずっと続いている感覚がつらい
  • 日常に少し戻るきっかけがほしい
  • 感謝を形にするタイミングがほしい

目的がはっきりすると、記念日の内容や重さを調整しやすくなります。目的が曖昧なままだと、「ちゃんとできていない」という自己評価につながりやすくなります。

4. 設計手順②:日付は自由に決めていい

記念日は必ずしも命日である必要はありません。以下のような選択肢もあります。

  • 一緒に暮らし始めた日
  • 思い出深い出来事があった日
  • 自分の気持ちが少し変わったと感じた日

「この日でなければならない」という決まりはありません。自分の心が納得できる日付を選ぶことが、記念日を重荷にしないコツです。

5. 設計手順③:内容は小さく、短くする

区切りを意識するあまり、立派な行事や特別な準備をしようとすると、当日の心理的負担が大きくなります。

写真を一枚見る、短い手紙を書く、静かにお茶を飲むなど、数分で終わる行為で十分です。記念日は「完璧にやる日」ではなく、「自分をいたわる日」として設計してください。

6. 設計手順④:毎年続ける前提にしない

記念日を作ると、「毎年同じことをしなければならない」と感じてしまう人もいます。しかし、心の状態は年ごとに変わります。

続けても、やめても、内容を変えても問題ありません。一度きりの記念日でも十分に意味があります。継続を義務にしないことが、長期的な心の安定につながります。

7. 注意点①:罪悪感から設計しない

「何かしないと申し訳ない」「区切りを作らないとダメな気がする」という気持ちが強い場合、その動機は罪悪感に近い可能性があります。

罪悪感を減らすための記念日は、後から自分を縛ることがあります。設計の動機が苦しさから来ていないか、一度立ち止まって確認してください。

8. 注意点②:当日つらくなったら中止していい

記念日当日に、想像以上に感情が揺れることもあります。その場合は、予定していたことを行わなくても構いません。

記念日は守るべき約束ではありません。中止や延期は失敗ではなく、心を守る判断です。

9. まとめ:区切りは「自分を楽にするため」に使う

ペットロスにおける記念日の設計は、悲しみを終わらせるためのものではありません。今の自分が少し呼吸しやすくなるための工夫です。

日付も内容も、続け方も自由です。区切りを作らないという選択も、十分に尊重されるべき判断です。

どうか、「これでいい」と思える形を選んでください。その選択自体が、あなたとペットの関係を大切に扱っている証です。

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